英語学習にも生かせる脳科学〜聴覚のしくみとリズム編~

なみのリズム、ウェブマスターのシンです。

この前「英語リスニング力UPに必須の知識★音を認識する仕組みがわかれば効果的な学習法もわかる!」で、聴覚のしくみを要約して説明しました。

今回は、もっと詳しく聴覚のしくみを見て、なぜ英語のリスニングにリズムが重要なのかに迫っていきます。

科学的な表現がこれまでより多く出てきて、読みにくいところもあるかもしれません。でも科学理論的な内容が好きな方には、役に立つ情報もあるかと思います。

聴覚ってほんと、とても繊細で精巧にできていてすごいんです。

まずは聴覚プロセスの概要です。

(注)脳と身体(内臓や筋肉など)を繋ぐ脳神経は12対あるが多くを省略している。 カラー図解 神経の解剖と生理 (メディカル・サイエンス・インターナショナル 大石実訳)をもとに加工編集

0 言語なり音楽なり、物音なりが発生する
1 伝音系

外耳では
耳介(いわゆる見える耳の部分)が音を集め、外耳道(耳の腔)で音を共鳴させる。

中耳では
鼓膜が共鳴によって振動し、中耳小骨を伝わって、三半規管と蝸牛に伝達される。

2 感音系

蝸牛では
有毛細胞が振動し音を電気信号に変換する(三半規管はここでは省く)。

蝸牛神経
有毛細胞の神経はそれぞれ周波数別に延髄にある蝸牛神経核に投射(伝達のこと)される。
また小脳核へ投射される経路もある。

蝸牛神経核
蝸牛神経からの音情報をリズムとして処理し、その情報を小脳核、脳幹の次の箇所( 外側毛帯核、中脳下丘など)、内臓や筋肉などに向かう副神経などに分かれ投射される。
また、小脳や副神経からのフィードバックを受け取る。

外側毛帯核、中脳下丘など
聴覚情報とは別々に処理された視覚などの情報とも統合され、側頭葉に投射される。

側頭葉
聴覚情報、視覚情報、副神経からのフィードバックなど、それぞれの情報をより高度に処理し前頭葉に投射する。

前頭葉
最終的に最も高度な情報処理と統合を行う。

とても複雑なプロセスをとっていますね。音はとても複雑だからこんなものか、とも思えます。しかし「音って何?」から見てみると、、この聴覚のしくみの巧妙さを実感できるかもしれません。

0、音って何?

と問われると、実は、単純な空気の振動を組み合わせたものなんですね。数学が苦手な人には申し訳ないですが、ここはご容赦ください。

多くの人は高校数学で三角関数を習ったと思います。ここでは「サイン」「コサイン」どちらでもかまわないので、グラフを想像してみて下さい。左から右に向けて同じカーブが上下しながら続いているあれです。とは言え、実際に空気が上下に動いているわけではなく、空気の圧力が進行方向に対して変化しているのです。

ここで、サインの数式を整数倍(2倍3倍・・・)すると、上下の幅が整数倍になります。周期は同じです。

次に橙色の線、サインの数式(sinX)のXを整数倍すると上下の幅は同じで、周期が半分に短くなります。ここ、数学が嫌な人はスルーしてください。

音は空気の振動が伝わる現象です。空気だけではなく水や他の媒質も音を伝えますが、私たちは空気の中にいるので、ここでは空気だけ考えます。空気の振動を細かく分解すると、さっきのサインカーブを整数倍したものとXを整数倍したものだけの組み合わせになるんです。フーリエ変換といいます。これは数式がありますが難しいのでここでは触れません。

サインの数式Xを整数倍した場合、その整数倍した数値を周波数といいます。上の図を見ると、黒色と青色のカーブの周期は同じですが、橙色のカーブの周期は他の2つの半分になっていることがわかると思います。つまりここで黒色のカーブの周波数を1とすると、橙色の周波数は2となります。周波数の単位はよく使われるHz(ヘルツ)で、1秒間に何周期あるかで表現されます。周波数は音の高さを表していて、音楽の「ラ」の音は約440Hzです。周波数が大きく(高く)なると音も高くなります。

サインカーブの上下の幅は振幅といい、音の大きさを表しています。振幅が大きいほど音が大きいということです。振幅が2倍の青色のサインカーブを作るには、黒色のサインカーブを2つ足し合わせればできます。つまり、同じ音の周波数のサインカーブが増えれば、音が大きくなるということになります。

下の図の緑色の線は、黒(基本)・橙(周波数2倍)・青(振幅2倍)のサインカーブを足し合わせたサインカーブです。(注:振幅を少し縮めています。)

なんだか、音のカーブを示しているように見えませんか?これでも実際の音からすると非常に単純ですが、これと同じカーブを描く音も存在します。カーブの形状は、音色に反映されます。

さて、複雑な音も、単純なサインカーブに分解できることがわかりました。蝸牛で音をどう分解するかに関係します。

1、伝音系

耳介

耳介は顔の横側についている、いわゆる耳です。耳介は発生した音を集めます。耳の凸凹は、音を反射し共鳴させる働きがあります。飾りではなくとても重要なんです。

外耳道

いわゆる、耳の穴です。耳介で集めた音を共鳴させて増幅させます。

鼓膜

耳の穴の奥にある薄い膜です。鼓膜が振動し、その振動が中耳小骨(つち骨、きぬた骨、あぶみ骨)を振動させます。中耳小骨の振動は、蝸牛と三半規管に伝わります。

2、感音系

蝸牛-音を分解し伝達するスゴイ器官-

蝸牛の中はリンパ液で満たされています。リンパ液が振動し、蝸牛の中にある有毛細胞が刺激を受けて電気信号に変換し、神経を伝わります。
さて、音は周波数と振幅に分解することができると先に述べました。蝸牛の中にある有毛細胞はそれぞれの周波数に対応しています。つまり440Hzの「ラ」の音にはそれに対応する有毛細胞があるわけです。大きな音はたくさんの有毛細胞を刺激します。つまり、どの有毛細胞がどれだけ刺激されたか、というように音を細かく分解し伝達するんです。(注:実際は、有毛細胞の伝達の仕組みはもっと複雑です。ここではあえて不正確ながらも単純化しています。)

「音って何」で示した図を例にしてみましょう。緑のカーブが音として蝸牛の中を通過したとしましょう。この音はどう分解されるのでしょうか?

「黒・青・橙の3つのカーブに分解され3本の蝸牛神経で伝達される」と考えた方、おしいです。実は、青のカーブは、黒のカーブを2つ足したものです、つまり2倍したものです。ということは、正解は、「黒・黒・黒・橙の4つの有毛細胞が刺激され、4本の蝸牛神経で伝達される」です。

このしくみ、すごいと思いませんか?

三半規管は、音の方向を感知する役割と重力の方向を感知する役割があります。生命にとってとても重要な働きをしていますが、ここでは省きます。

 

蝸牛神経・小脳

有毛細胞の刺激を伝達します。伝達経路は複数あり、蝸牛神経核、小脳に音の電気信号が投射(伝達されること)されます。小脳は意識化に上らない身体の動きなどを制御しています。2本足で転ばずに歩けるのも、そこにあるものを上手に手でつかむことができるのも小脳のおかげです。

蝸牛神経核

蝸牛神経から投射された電気信号を受け取ります。そしてバラバラになっている音の信号からリズムを認識します。ここでリズム処理が加えられた音の信号は、認識を行う次の担当箇所すなわち脳幹の外側毛帯核、中脳下丘などや、側頭葉に投射されます。それだけでなく、小脳や副神経にも投射されます。副神経からは、内臓や筋肉に進みます。さらに蝸牛神経核には、副神経からのフィードバックも投射されます。あとで触れますが、警戒するような音を聞いた瞬間、脳の認識より早く鼓動が高まり、筋肉が硬直するのはこの経路のためです。副神経や小脳からフィードバックされた情報も含めてリズム処理され、次に伝達されるのです。

外側毛帯核、中脳下丘など

視覚情報や他の五感情報は、それぞれ別々の経路で最初に認識、処理されます。外側毛帯核、中脳下丘などでは、聴覚情報とは別々に処理された視覚などの情報とも統合され、側頭葉に投射されます。ここでの情報統合はまだ高度な統合ではありません。

側頭葉

聴覚情報、視覚情報、副神経からのフィードバックなど、それぞれの情報をより高度に処理し前頭葉に投射されます。

前頭葉

最終的に最も高度な情報処理と統合を行います。もっとも高度な情報処理とは、現在進行して受け取っている五感情報や身体からのフィードバックだけでなく、記憶などの情報も含めた情報処理ということです。

さて、聴覚のプロセスをざっと追ってきました。

人間の聴覚はとても敏感にできています。音を聴くことができる範囲を可聴範囲といいます。成人でだいたい20~16000Hz、子供では20000Hzまで聞こえるといわれています。高齢者では高音域で6000Hzまで低下し、子音の聞きづらさにつながります。また、成人で周波数1000Hz付近で3~4Hzの差を聞き分けられるほどの識別能力があります。音の大小については、最大値100万分の1の差を聞き分けることができます(出典は後述の参考図書2)。

3、リズムと情動との関係

次に、蝸牛神経核でリズム処理された情報が小脳や副神経に向かう経路のことを考えてみましょう。

例えば、仕事などに集中しているとき聞きなれない「ゴゴゴ・・・・」という地鳴り音が聴こえてきたとします。このときあなたはどんな反応をするでしょうか?何かに集中していたとしても、とっさに動きが止まり、鼓動が早くなっていると思います。その後わずかに時間をおいて、どんな音か認識し、原因を考えるはずです。もしその音がだんだん大きくなりながら、さらに少しずつ高くなっているとしたら、恐ろしくなり音の原因を見に行くとか確認しようとするはずです。いやそれよりも早く一目散に逃げる方がいいかもしれません。音が少しずつ高くなるということは、ドップラー効果で音源が近づいてくるということを示しているからです。

また、外を散歩しているとき草むらで「カサカサ」という草をかき分けるような音がしたときはどうでしょう?やはりびくっとして一瞬動きが止まり、音がする方を見ると思います。

これは本能的に備わっている身体の仕組みです。鼓動が早まり筋肉が緊張するのは、今やっていることを中断し、とっさに次の動きができるようにするためです。

このことから考えても、リズム音は本能に直結した音の要素だといえます。

バラバラの要素に分かれて伝達された音が、最初にリズム処理されるのもうなずけると思います。

それだけでなく、リズムは続いて処理される音情報に埋め込まれています。脳幹の蝸牛神経核から副神経を伝って体に送られた音情報が、脳幹にフィードバックされ、また小脳からもフィードバックされて、それらの情報も含めて次に投射され、より高度な認識になっていくのです。

さて、この副神経からのフィードバックは、実はとても重要なんです。英語学習にも生かせる脳科学〜「こころ」の働き編~で詳しく述べますが、ズバリ「情動(※)」のしくみにかかわってくるからなのです。(※「情動」は神経科学で使う用語で、感情と読み替えても問題ありません。)

音は他の感覚に比べて情動への作用が大きく現れます。ある音楽が、それを聴いていた時の思い出と感情を呼び起こす、という経験は誰にでもあるはずです。

聴覚の最初の認識段階でリズム処理され、副神経への伝達とフィードバックを経て本能的な情動を形成するという経路があるように考えられます。そして統合されて、より高度な認識を行うよう順次伝達されていきます。

4、最後に

聴覚とそれに伴う身体の反応が、リズムを重視することがわかっていただけたと思います。言葉を聴くときもリズムが重要ということも、簡単に推測できると思います。

社会が異なれば身の回りの音も異なり、音のリズムも異なるものです。言語によってリズムが異なるのも当然のことです。

言葉のリズムについてはここでは触れていませんが、これまでのことを見ると、音としての言葉にリズムが深いところで関係していることがわかると思います。音の認識の根本にリズムがあると考えてもいいでしょう。

先に述べたように、人は音の聞き分けについては、とても敏感です。つまり音の情報は非常に敏感なレベルで脳に届いているのです。それでも聞き分けられないのは、受け取った脳の部分が音をうまく認識できていないということです。認識は学習によって高まることがわかっています。

私たち「なみのリズム」が、英語のリズムを認識できるように練習することを重視する理由がここにあります。みなさんもぜひ英語のリズムを身に付けて、今まで苦労していた英語学習を楽しいものに変えてください。

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英語リスニングの悩みを解決!リズム音読とは?

聴覚プロセスについての参考図書

1 カラー図解 神経の解剖と生理(メディカル・サイエンス・インターナショナル 大石実訳)

2 音を追究する (放送大学教材)(放送大学教育振興会 大橋理枝 佐藤仁美 著)

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